講義資料③高等教育における聴覚障害学生への配慮について

聴覚障害とは

聴覚障害は「見えない障害」といわれ、外見上、障害の有無が分かりません。

その為に、どのようなハンディキャップがあるのか気づいてもらえず、サポートが受け難い側面があります。

聴力レベルが同じでも、聞こえの状態は人によって様々です。

補聴器は、音を増幅しますが、聞こえ方を補正するわけではないので、補聴器をしているから会話に問題がないと言うわけではありません。

聴覚障害学生への配慮について

① 当該学生の状況把握
聴覚障害は外見上、健常者と見分けがつきません。「聞こえにハンディがある。」という認識をもって接してください。
聴覚障害者といっても、一人ひとり聞こえの状況が違います。当該学生が複数いる
場合は、それぞれのニーズの把握が必要になります。

② 放送や口頭での連絡が分からない(特に、非常時の情報が得にくい)
休講の連絡や予定の変更などを、放送や口頭で伝えた場合、きちんと伝わってないことがあります。メールや板書など「見て分かる方法」で伝えてください。

③ 1対1の会話や簡単な内容は、口話でコミュニケーションが出来ても、(口話による)集団でのコミュニケーションは苦手です。

④ 「見て分かる情報を与える」ことがサポートの基本です。(書いて伝える)

⑤ 授業形態によってサポート方法を工夫できます。
・大人数での講義 
・少人数でのゼミ等

聴覚障害学生は、友だちとの会話に入れないことが多々あります。
大学生活は新しい人間関係を広げるという場でもありますが、友人同士の些細な会話に入れず、仲間作りが難しいことがあります。(個々の性格にもよる)
手話サークルの立ち上げ。(当該学生が希望すれば)

情報保障(講義保障)とは

・ ノートテイクや手話通訳をとおして講義を受けることは、特別扱いではなく、講義の内容を理解する為に必要不可欠なものです。

聴覚に障害のある学生は、講義保障があることによって、聞こえる学生と同じスタートラインに立つことができます。

・ ノートテイク・・・90分の講義の場合、2人のノートテイカーがつき、15分ぐらいを目安に交代します。

話しての口調(話す速さ)にもよりますが、手書きの速度は、話し言葉の20~30%です。

・ 手話通訳・・・ノートテイクと同じように90分の講義で2人の通訳者がつき、15分ぐらいを目安に交代します。

70~90%ぐらいの情報を伝えることが出来ます。

・ 講義の内容だけではなく、いろいろな情報を他学生と共有することを保障し、有意義な学生生活をサポートして下さい。(他学生の発言やその他音情報)

・ノートテイカーが講義を聴いて理解し講義をまとめるのではなく、当該学生の代わりに講義を聞き、書いたノートを見て当該学生が自分でノートをまとめることが出来るようなノートテイクをします。

・ ノートテイクした内容の管理・・・ノートテイクされたペーパーを、他学生に見せることは厳禁です。(当該学生と事前確認をしてください)

《 授業中に配慮していただきたいこと 》

・ 聴覚障害学生と一緒に通訳者2名(ノートテイカー又は手話通訳者)がすわれるスペースが必要です。

・ 「声の大きさ。」「話の区切りで少し間をとる。」など話し方の配慮をお願いします。(ノートテイク、手話通訳には、タイムラグがあります。)

・ レジメの準備(講義の流れが確認できる)

・ 教室の照明・・・ノートテイクや手話通訳が見える光源の確保。

特にパワーポイントやスライド等で部屋を暗くした際の照明をどうするか。

・ 板書と通訳(ノートテイクを含む)を同時に見ることはできないので、板書しながら話すことはしない。

・ 映像機器(プロジェクター)を使用する際は、映像を確認する時間を作って下さい。又は、内容を印刷したものがあると助かります。

・ 聴覚障害学生に話しかけるとき(出席確認等)は、目を合わせて確認。

・ 教科書やプリントなどを使用するときは、ページ数を伝える。

・ DVDなどの映像を利用する際は、字幕が入っていることが望ましいが、
技術的又は時間的に難しい場合は、文字起ししたプリントや概要を書いたプリントを聴覚障害学生に渡すという方法もある。

・ 他学生が発言する時の声量の問題(講義を受けている人全員に聴覚障害について理解して欲しい・・・当該学生が希望した場合)

・ ノートテイカーの事前学習の問題(知識があるのとないのとでは筆記の量や質が異なる・・・先輩学生をノートテイカーとして養成する。)

《 英語の授業 》

・ 当該学生と話し合ってもらいたい。
(例)リスリング&スピーキングの授業をリーディング&ライティングに替える

《 試験の際に配慮していただきたいこと 》

・ 試験の際には、通訳者は同席しないと思いますので、開始時間、終了時間、注意事項などを板書するか、プリント・メモを渡すなどして伝えてください。
※ 参考
PEPNet-Japan 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク
日本学生支援機構
宮城教育大学 (しょうがい学生支援基礎知識
聴覚しょうがい学生支援 教職員のための手引き)
全日本ろう学生懇談会
ノートテイクに関しては
◎ 早稲田大学 
◎ 中央大学
◎ 札幌学院大学
◎ 関西学院大学
◎ 愛媛大学 等 
多くの大学のホームページで大学での取り組み例が紹介されています。