手話通訳総合的指針④手話に関する総合的指針

手話に関する総合的指針

~聴覚障害者の豊かな生活を目指して~

Ⅰ.手話通訳と手話指導に対する指針

Ⅱ.手話学習・通訳者集団に対する指針

Ⅲ.手話奉仕員・通訳者派遣事業に対する指針

Ⅳ.専任手話通訳者に対する指針

平成15年4月1日

社会福祉法人

大分県聴覚障害者協会

Ⅰ 「手話通訳と手話指導に対する指針」

はじめに

  昭和24年に身体障害者福祉法が制定され、福祉事務所の設置と身体障害者福祉司の配置が義務づけられた時に、当時の全日本ろうあ連盟理事長は「ろうあ者専任福祉22司」の設置を国に要望しました。

  しかし、この要望に対して国は「身体障害者社会参加促進事業」のメニュー事業として昭和45年に手話奉仕員等養成事業を開始するにとどまり、ボランティア通訳での対応という姿勢を示しました。

手話奉仕員の養成対象も「聴覚障害者福祉に熱意と理解を有する家庭の主婦等」とし、職業としての手話通訳という意識は希薄で、養成期間も内容もすべて自治体任せであり、全国まちまちの状態が続いてきました。

  しかし、平成11年度から「手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム」が示され、全国統一のカリキュラムで指導が行なわれるようになった事と手話通訳者の必要性が認識され、手話通訳者養成・派遣事業が開始された事は大きな前進といえます。

  手話奉仕員養成事業開始から長いみちのりであったといえますし、今後も手話通訳士の養成、設置、派遣という課題が残されおり、聴覚障害者や手話サークルを中心とする一般市民と連帯した運動が必要となってきます。

そこで、手話サークルや通訳活動者に対して、県聴覚障害者協会の手話通訳と手話指導に対する当面の指針を示し、相互理解の基に連帯の輪を広げていきたいと思います。

1.手話の指導について

 大分県に於いては昭和45年に国の手話奉仕員養成事業が開始された翌年の昭和46年から大分市に於いて手話講習会が開始されました。

 当時手話講習会の指導はろうあ協会の役員が担当しており、手話がある程度指導できる健聴者は僅か数名という状況でした。

その後、手話講習会の会場が徐々に増えるにつれて、手話講習会修了者である健聴の数名が講習会の指導に加わることになりました。

 そして、昭和55年から手話通訳の資質向上を目的として「大分県手話通訳認定試験」が開始され、健聴者の講師については、この認定試験合格者の中から適当な者に依頼するというようになり、現在まで続いています。

 それは、手話ブームといわれ手話が社会に広まっていくけれども、聞こない人の問題や福祉が、手話普及に比例して向上していないという問題に対しての対応でもあったわけです。

 つまり、手話を興味本位に指導するのではなく、聴覚障害者にとっての言語であり、福祉向上のための大切な手段でもあるということを含めて指導できる講師を派遣していくという考え方を持っていたわけです。

協会派遣の講師は各種の研修を受けており、公的な機関からの依頼に責任をもって応えていきたいという考えに基づいたものです。

  この県聴覚障害者協会の考え方は先に厚生省から示された手話奉仕員・通訳者養成カリキュラムも同じ考え方に立つものであり、講師については手話通訳士等や福祉関係職員、医師等幅広い分野にわたる専門家が指導にあたることとしています。

 今後協会としても、講師の研修会を更に充実させ、より専門的な指導技術を研鑽していきたいと考えています。

 しかし、公的機関等主催の手話奉仕員養成事業とは別に地域の公民館や企業、教育機関等からの講習会の指導も協会に依頼されるようになってきており、手話が多方面に広がってきています。

 この広がりの中で県聴覚障害者協会として手話指導に対する具体的な例を下記に示します。

1)市町村行政、社会福祉協議会、公民館、企業等の主催する手話講習会

①継続開催=県聴覚障害者協会と主催者と協議して、委託契約等を結び開催する講師派遣については協会が派遣する。(奉仕員養成カリキュラムに基づくもの) 

例)○○町主催手話講習会入門、基礎課程

②1回のみ=県聴覚障害者協会が派遣窓口となり、当該市町村や隣接する地区聴覚障害者協会や手話サークル会員の中から適当な者を講師として派遣する。

必要に応じて地区聴覚障害者協会支部や手話サークルと協議するものとする。

2)教育機関等(幼稚園、小中高校、短大、大学、専門学校)

①継続開催=県聴覚障害者協会と主催者と協議して、講師派遣については協会が行なう。

例)○○高校福祉科授業  ○○専門学校手話授業

②1回のみ=県聴覚障害者協会が派遣窓口となり、当該市町村や隣接する地区聴覚障害者協会や手話サークル会員の中から適当な者を講師として派遣する。必要に応じて地域聴覚障害者協会支部や手話サークルと協議するものとする。

3)講演会等(手話技術指導でなく、講演が中心となる場合)

①県レベル=県聴覚障害者協会と主催者が協議して講師派遣を行なう。  
主催者に「手話通訳派遣依頼書」を協会へ提出していただく。

例)県ボランティアセンター主催の体験教室

②市町村レベル=県聴覚障害者協会が派遣窓口となり、当該市町村や隣接する地域の聴覚障害者協会支部や手話サークル会員の中から適当な者を講師として派遣する。

必要に応じて地域聴覚障害者協会支部や手話サークルと協議する。

2.手話通訳に関して

1)団体からの通訳依頼

①県内全域を対象とした大会や主催が県レベルの団体主催者からの通訳依頼に基づき協会が通訳者を派遣する。通訳に係る費用は主催者の負担を原則とする。

例)県社会福祉大会  県同和教育研究大会

②市町村を対象とした大会や主催が市町村レベルの団体

県聴覚障害者協会が派遣窓口となり、当該市町村や隣接する地域の登録手話奉仕員の中から適当な者を通訳として派遣する。

必要に応じて地域の手話サークルと協議するものとする。

2)個人からの通訳依頼

聴覚障害者や聴覚障害者と関わる人たちが安心して利用できる手話通訳訳派遣制度確立のために長い間運動を続けてきていますが、まだ不十分な制度と言わざるを得ません。

この制度を今後更に充実させていくためには、聴覚障害者自身や手話通訳 者自身が派遣制度の現状と今後の方向について十分に理解することが重要になります。

通訳派遣ルールに従って通訳活動をすすめていただきたいと思います。

特に留意してほしい派遣ルールとは下記の①~③です。

①派遣元からの依頼に基づいて通訳活動を行い、個人的な通訳活動を慎む。
(緊急の場合においても派遣元と連絡を取るように努める)

②手話通訳活動報告書は必ず派遣元に提出する。

③手話通訳内容についての守秘義務の遵守

Ⅱ 「手話学習・通訳者集団に対する当面の指針」

はじめに

手話講習会修了者が中心になって手話サークルが県下各地に誕生し、地域での聴覚障害者との交流の場として、また手話通訳技術や聴覚障害者問題を直接学ぶ場としての役割を担ってきました。

一方聴覚障害者としても健聴者との交流の場として、また各種の情報を得る場として手話サークルから得たものは大きいと考えます。

そして、県下に手話サークルが増えてくる中でサークル間の連絡調整機関として大分県手話サークル連絡協議会が昭和54年に誕生し、翌年の昭和55年には全国手話通訳問題研究会大分支部が設立されました。

手話通訳者や通訳者集団に対するニーズは聴覚障害者や聴覚障害者団体の置かれている社会的な状況によって変化してきます。

したがって手話学習者や手話通訳者集団は聴覚障害者の置かれている社会的状況の把握に努め、現在のニーズは何かを的確に把握して、学習や活動に反映させていかなければなりません。

このような状況の中で手話サークルや全国手話通訳問題研究会大分支部、大分県手話サークル連絡協議会に対しての当面の方針をここに示すものです。

この指針のベースになっているのは全日本ろうあ連盟から出された「手話サークルに関する指針」です。

2.手話サークル

手話サークルは昭和46年に大分市に手話サークルが結成され、現在では10市8町村に20の手話サークルが誕生していますが、サークルは結成したものの定例学習会もままならなかったり、活動が停滞しているサークルも見受けられます。

1)手話サークルの目的

手話学習を通して、聴覚障害者問題への理解を深めると共に社会啓発を行なうことにより、聴覚障害者の基本的人権的の擁護と社会参加を推進することを目的とすべきで、具体的には下記の取り組みを行なうことにあります。

①手話を正しく学習し、手話普及と社会的な認知を促進する。

②聴覚障害者の生活・文化・歴史等を正しく学び、その知識を社会に還元する。

③聴覚障害者を含めた障害者の生活・権利の制約を正しく把握し、それをなくすための活動を行なう。

2)手話サークルの組織

手話サークルは、手話を学びたい健聴者の自主的な組織であり、その運営等は会員の合意を基本とすべきです。

 しかし、その活動が聴覚障害者福祉と密接な関係があるため下記の点について配慮していただきたいと考えています。

①聴覚障害者は聴覚障害者協会へ所属し、その運動に主体者として関わっていき、手話サークルへの参加は会員でなく協力者として関わっていくことが望ましいと考えます。
聴覚障害者を会員とした場合にサークルに入会していない聴覚障害者がサークルに自由に参加しにくい状況を生み出すことになり、ひいては一部の限られた聴覚障害者との交流にとどまることになります。

②一つの市町村に一つの手話サークルが望ましいと考えており、活動時間帯の違いにより、昼と夜とに分かれる場合はサークルの名称は同じにし、昼と夜の会員の交流促進と役員同士が定期的に協議する場を設けるように努めるようにする。

③県聴覚障害者協会は「大分県手話サークル連絡協議会」に加盟している団体を手話サークルと位置付け、協会からの文書等はこの加盟サークルのみに送付する。

④手話講習会修了後の自主的な学習会等については、聴覚障害者福祉向上のために聴覚障害者協会と組織的に連携していく手話サークルへ加入していき活動を続けることが強く望まれます。

3)手話サークルの活動

手話サークルの活動は、「1.サークルの目的」で述べていることを具体化するためのものです。サークルの人数や構成メンバー等により活動内容は様々であると思いますが具体的には下記の活動が望まれます。

①定例学習会の開催

「ことば」としての手話を身につけていくためには定期的、継続的な学習が  必要とされ、一週間に一回程度の定例会開催が望ましいと考えます。毎週開催が困難な地域においても最低月に1回程度の開催が望まれます。

②学習内容

手話技術、聴覚障害者福祉、教育、生活等幅広い分野の学習をしていき、聴覚障害を正しく理解して活動していける資質を身につける学習が望まれます。

③聴覚障害者との交流

定例会の時やそれ以外の時にも聴覚障害者と定期的に交流する機会を持つように心がける必要があります。

④聴覚障害者団体との協力

地域の聴覚障害者団体から協力依頼があった時には手話サークルとして積極的に協力していく姿勢を持つことが望まれます。

また、手話サークルの行事等に地域の聴覚障害者協会の協力が必要な場合は依頼していき、相互の協力体制を築いていくことが望まれます。

⑤地域の聴覚障害者団体の自主性の尊重

サークル活動を進めるにあたって地域の聴覚障害者団体と十分に協議し、組織間の合意に基づいて活動を進めていくことが望まれます。

善意からの出発であっても結果として、ろう者や聴覚障害者団体の自主性や活動を低下させることのないように心しなければなりません。

4)聴覚障害者団体との関わり

手話サークルは、会員の合意による幅広い活動を基本としつつも、手話サークル存立の理念からして、全国や地域の聴覚障害者団体の運動をよく理解し、サークルの課題として取り組めるものは会員の意見を十分に反映させながら、連携活動ができるようにすべきです。

 年間の活動計画を作成する際に県、地域聴覚障害者協会と行事が重ならないように留意し、地域聴覚障害者協会とは年度始めに行事のすりあわせを行なうことが望ましいです。

 サークル活動で問題が生じた時は個々の聴覚障害者と相談するのでなく、県や地域聴覚障害者と相談していき、組織的な運営に心がけることが求められます。

3)大分県手話サークル連絡協議会

県内の手話サークルの情報交換や相互研修の目的で昭和54年に結成された組織であり、現在県聴覚障害者協会と連携をとりながら行事等を進めているので、活動が協会方針と大きくズレることがないし、リーダー、研修会、手話研修会、その他県外の会議等も出席しており、組織はスムーズに運営上されていると思います。

しかし、手話サークルへの情報提供や研修会のあり方等については今後下記の方向で取り組んでいくことが望まれます。

<課 題>

①聴覚障害者福祉の現状や聴覚障害者協会の活動方針等について十分に認識し、幅広い視点に立って加盟サークルに情報を提供していける組織体制が求められます。

②日常的に加盟手話サークルの活動状況の把握に努め、サークル活動が停滞している場合に必要なサポートができる体制づくりが求められます。

<今 後>

①県内の手話サークルについては県手話サークル連絡協議会と情報交換し、県聴覚障害者協会としてサークルの主体性を尊重しながら、必要に応じて情報提供や指導をしていくことが必要と考えます。

②大分県手話研修会は、手話学習者に求められること等を総合的に検討して研修内容を考えていく必要があり、以前のように県手連、全通研支部、県聴障協の三者で話し合って進めていく必要があります。

4)全国手話通訳問題研究会大分支部

昭和55年に全国手話通訳問題研究会の支部として誕生した組織であり、聴覚障害者協会と連携した団体として位置付けられています。

定期的に学習会を開催したり機関誌の発行も以前と比べて順調に発行できていますが、学習会の参加者が少数だったり、学習内容も手話技術に偏る傾向が見られます。

今後は全通研活動の目的を再確認して、ろうあ運動の歴史的視点や福祉的視点から全通研活動をとらえた活動が望まれます。

<今 後>

①全通研支部の自主性や組織を尊重しつつ、県聴覚障害者協会と協議して共通の課題について連携して取り組んでいくことも検討していく必要があります。

②県手連と全通研と県協会の三者により「大分県手話研修会」を開催する方向で取り組んでいき組織の活性化を図る必要があります。

Ⅲ 「手話奉仕員・通訳者派遣事業に対する指針」

<経 過>

昭和46年に手話講習会が開催され、昭和52年には聴覚障害者が病院やPTA等に行く時に手話奉仕員が同行する「手話奉仕員派遣事業」が大分県の事業として開始されました。

<現 状>

県下の市町村においても手話講習会や手話奉仕派遣事業が開始されるようになり、聴覚障害者の社会参加のきっかけができてきたといえます。

現在では大分市・別府市・中津市・日田市・佐伯市・臼杵市・津久見市において派遣事業が実施されるようになり、その他の市町村は県の派遣事業で対応しています。

しかし、「手話奉仕員」の養成のみでは聴覚障害者や社会からの通訳要求に十分に対応できないとの認識に基づき平成11年度から「手話通訳者養成事業」が開始されるようになり、今後は「手話奉仕員」と「手話通訳者」の役割が明確になってくると思われます。 

<今 後>

手話奉仕員派遣事業は聴覚障害者の社会参加に一定の役割を果たしてきており評価はできますが、手話通訳派遣を通じて把握した聴覚障害者問題の改善について組織的な取り組みは十分に行なわれてきておりません。

手話通訳の専門性が追及され、通訳要求も多様化してきている今日、県聴覚障害者協会として、手話奉仕・通訳者の派遣事業について下記の方針で取り組んでいきたいと考えています。

1.聴覚障害者問題の一元化

聴覚障害者を取り巻く諸問題を把握して、支援のための事業に取り組んでいくためには県聴覚障害者協会に派遣事業を集中させていき、組織的に対応していかねばならないと考えています。まだ実施していない市においては早急に実施に向けて検討していただきたいと思います。

また、市町村合併を契機に手話通訳者派遣事業を全市が実施することを期待しています。

そして、県聴覚障害者協会に派遣事業を委託していない市については下記の①~④の点からも早急に県聴覚障害者協会へ事業委託していただくように取り組んでいきたいと考えています。

①手話奉仕員派遣事業は聴覚障害者の医療、家庭内の問題、職業、財産等個人のプライバシーに関わりのある業務が多く含まれるため、その派遣調整や活動報告書等の管理は手話サークル等が行なうべきではないと考えます。

管理は公的な機関や法人が行うべきであり、県や市からの派遣事業の受託実績のある県聴覚障害者協会が適当であると考えます。

②手話通訳を通じて聴覚障害者の実態を把握しても行政に具体的な政策提言や関係機関への様々なアプローチもできにくいと考えます。

県聴覚障害者協会であれば教育、福祉、労働等さまざまな立場からの問題分析が可能であり、行政への施策提言や法人の自主事業へとつなげていき、聴覚障害者福祉向上につながっていく組織的な対応が可能な団体が派遣事業は行なうことが適当と考えます。

③聴覚障害者の財産、生命等の諸権利保障も担うことのある登録手話奉仕員に対して責任ある研修が保障されなければならないと考えます。そういう意味で指導技術を持っている県聴覚障害者協会が適当と考えます。

④専門派遣コーディネーターによる調整聴覚障害者のコミュニケーション力、社会生活能力、通訳依頼内容に応じて適当な手話通訳者を派遣していくには、幅広い知識と聴覚障害者問題に精通している者が派遣調整を行なうべきであり、年間2000件近くの派遣調整を行なっている専門派遣コーディネーターを設置している県聴覚障害者協会が適当と考えます。

2.手話通訳事業の今後

聴覚障害者に対する手話通訳は「ボランティアでの対応で十分」という考えから、手話通訳は専門性を持った福祉サービスという認識に変わってきています。それは平成元年度からの「手話通訳士試験」の開始や平成13年度からの「登録手話通訳者試験」の開始等からも分かりますし、平成12年には社会福祉法の中に「手話通訳事業」が追加され、社会福祉法人大分県聴覚障害者協会の定款にも「手話通訳事業」を入れました。

今後は社会福祉法人の事業としても手話通訳事業に取り組んでいく方針であり、責任と専門性のある活動を目指しています。その点を関係者の皆様にご理解いただきたいと存じます。

上記の方針ですので手話通訳を「善意のボランティア」としてとらえる視点はなくしていきたいと考えていますし、聴覚障害者の諸権利に関わる重要な役割を担う専門性が要求されていることの認識を十分に持っていただきたいと考えています。

Ⅳ 「専任手話通訳者に対する指針」

<経過と現状>

大分県における専任手話通訳者設置は昭和50年に大分市役所に設置されたのを契機に、現在では県福祉事務所6ヶ所、市役所5ヶ所、職業安定所5ヶ所の16ヶ所までに拡大してきた。

 公的機関に手話通訳者が設置されたことにより聴覚障害者の一定の社会参加が進んできており、手話通訳制度が不十分な中で取り組んできた手話通訳者の労苦に感謝するものである。

 しかし、介護保険制度が開始され、平成15年度からは支援費制度が開始されようとしており、聴覚障害者を取り巻く環境は大きく変わってきている。

また、手話通訳を取り巻く環境も従来とは大きく変わろうとしており、平成元年度からの「厚生労働大臣公認手話通訳士」試験の開始、平成11年度からの「手話通訳者養成事業」の開始、平成13年度からは全国統一の「手話通訳者登録試験」が開始されました。

これは全日本ろうあ連盟や地域聴覚障害者団体の永年の運動により、手話通訳の「専門性」に対する認識が一歩進んだということであり、この成果を具体化していくために当協会は「専任手話通訳者」に対する指針を示すものです。

 大分県の手話通訳者設置の現状は非常勤職員等の不安定な勤務形態であったり、地域的な事情により下記に示す通訳者の確保ができにくい面があるが、地域で生活している個々の聴覚障害者の生活の向上と人権を保障していくために下記にあげる「専任手話通訳者」の養成と確保に全力をあげて取り組んでいく。

①専任手話通訳者は手話通訳士資格を有する者または手話通訳士資格取得を目指して取り組んでいく姿勢を持っていること。

②手話通訳者は聴覚障害者の基本的人権を保障する役割を担うという自覚に基づき、常に技術や知識の向上に努める姿勢を持っていること。

③専任手話通訳者は聴覚障害者の地域での生活を支援していくために、地域の手話サークルや全通研支部会員との連携した活動が求められる。従って通訳者集団に所属して日常的に活動していること。

④聴覚障害者の福祉向上に取り組んでいる当事者団体である当協会と連携して通訳活動を行なう姿勢を持っていること。

⑤通訳上の問題や聴覚障害者が抱える問題の原因を考え、整理していく基礎となる、聴覚障害者福祉や社会福祉についての知識を身に付けていること。また、身に付けようとする姿勢を持っていること。