聴覚障害者情報提供施設における「相談の意義と効果」
はじめに
聴覚障害者は「情報障害者」とも言われています。
必要としている情報が「早く」「正確」「スムーズ」に届どかないハンディを抱えています。
このような聴覚障害者が抱える問題を公的な施設として対応するため、平成2年に視聴覚障害者情報提供施設の設置が法制化され、現在50を超えています。全国の都道府県指定都市に設置されるようなりました。
この情報提供施設では、聴覚障害者からの各種相談を受たり、多様な方法で情報提供を行っています。
1.聴覚障害者情報提供施設の「相談」事業の定義と役割
①県内の相談機関が、聴覚障害者が相談できる体制が整っていない
②相談機関に「コミュニケーション技術」と「聴覚障害者の特性」を理解した人的資源が整備されていない。
③聴覚障害者は、各種相談機関から「人的資源の不足」という理由で、相談機関から阻害されており、聴覚障害者に対する「バリア」はいまだに残っています。
2.聴覚障害者情報提供施設における「相談事業の役割と必要性」
①上記1の①~③のように聴覚障害者が相談機関を利用しようとしても、合理的配慮がされておらず、スムーズに利用できないのが現状です。
②この現状を考え、聴覚障害者情報提供施設においては、個別の相談に偏ることなく、幅広いツールを活用して聴覚障害者のみならず、多くの市民に対して情報提供していき、聴覚障害者に対する理解者を増やすことの必要性を感じます。
③「相談」の定義を従来のような「狭義」の相談でなく、「広義」の相談事業に拡大していくように努めていくことが必要と考えます。
3.広義の「相談」と「情報提供」の定義
従来の相談のように、対面して相談者とクライアントが相談することにとどまることなく、聴覚障害者が抱えるハンディを解消するためには、狭義の相談のみでなく、メールでの一斉送信、ブログ、ホームページ等による情報提供等を総合的に提供していき、「情報障害者」としての聴覚障害者の「バリア」の軽減に努めていくことが大切と考えます。
4.具体的相談と「情報提供」について
①社会福祉法人 大分県聴覚障害者協会の定款には、第2種社会福祉事業として「相談事業」が明記されています。
②相談事業を推進するにあたって、聴覚障害者が「主体的」に判断し、「決定」するための助言等を含めた「情報提供」を積極的に行うことが求められています。
③「情報」とは、「聞こえる人と同等の情報」を意味します。
④情報提供は多様なツールを使って、幅広い情報を提供していきます。
5.聴覚障害者情報提供施設における相談について
①原則として、「相談」と「情報提供」については、区別する必要はないと考えます。
②聴覚障害者は各種の情報から疎外されていることが多く、あくまでも個人が必要としている「情報」であり「情報提供」と考えてください。
聴覚障害者に対して、情報を保障していない社会の中で「情報」と「情報提供」の違いを論じることは無意味だと考えます。当事者の立場で判断すれば、2つの必要性が理解できると思います。
6.聴覚障害者情報提供施設の相談業務の具体例
①一般県民からの質問等
Q1.手話講習会、要約筆記、盲ろう養成講座はどこで習えば良いか
A1.【情報提供】
②家族、企業等からの質問等
Q2.家族で話し合いたい、手話、要約筆記者、盲ろう通訳介助員の派遣はできますか?
A2.費用は不要で、派遣可能です。企業等への派遣は費用が負担の場合があります。【情報提供+相談支援】
③行政等からの質問等
Q3.手話通訳、要約筆記、盲ろう通訳派遣について
A3.詳細について質問に対応【情報提供+相談支援含む】
④補聴器の購入についての相談
Q4.市役所の福祉課で相談できます
A4.身体障害者手帳をお待ちですか?お持ちでない場合は手帳発行の手続きが必要になります・・・・・・【情報提供】
⑤県・市の担当者来セ
Q5.事業について打ち合わせ、質問等
A5.質問への応答と対応【事業への対応と提案←相談】
⑥講師への対応と打ち合わせ
Q6.講座の経過と本日の参加者について質問等
A6.今までの講座の流れと今後の希望等打ち合わせ【講座についての打ち合わせと講座の希望など・・・・【打ち合わせ+相談業に含まれる】
【具体的な事例】下記の①~⑯の相談項目は、相談と情報提供
下記の「相談」、「情報提供」は障害者自身が求めていることです
①職業②家庭③医療④介護⑤住居⑥裁判⑦財産⑧交通事故⑨悪質商法⑩手話通訳派遣・要約筆記派遣⑪福祉機器⑫難聴⑬聴覚障害児教育⑭手話学習⑮各種手続き⑯その他